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ボルボの雪上テスト現場へ潜入! EX30でエルク避けを体験 ソフト開発での重要性も増す

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ボルボの雪上テスト現場へ潜入! EX30でエルク避けを体験 ソフト開発での重要性も増す

氷点下40度から灼熱の60度まで

アイスバーンの運転に長けたニクラス・リンドベリ氏が、最新のボルボEX30で華麗にカーブを抜けていく。腕に自信があるドライバーが見ても、きっと感心するほどのスキルだろう。

【画像】雪上テスト現場へ潜入 ボルボEX30 XC40にC40、EX90 1960年代の名車アマゾンも 全132枚

筆者は遥々、スウェーデン北部のルーレオーという町へやってきた。ストックホルムから北へ約900km。少し北上すれば、北極圏という土地だ。ここは、1960年からボルボが車両開発のテストを行ってきた場所だという。

お邪魔したタイミングでは、EX30と、XC40の後継モデルになるEX40の評価が進められていた。この2台に限らず、初期の試作段階から量産仕様に至るまで、様々なフェイズでテストが繰り返されている。走行距離もかなりのものだろう。

スウェーデン北部だけでなく、氷点下40度から灼熱の60度に至るまで、実施環境は様々。車載システムや装備品などのすべてが、特殊な条件でも機能するか入念に検証される。経験豊かな技術者とドライバーによって。

現在、同社で安全技術の上級マネージャーを務めているのが、ミカエル・リュング・オースト氏。認知科学に関する知識を有し、ドライバーが取る行動を専門的に研究している。事故の要因をあぶり出し、減らすことが目的だ。

彼が説明する。「冬季テストはかなり単純。過酷な環境で、クルマの動作状態を確かめます。極端な環境でクルマがどう動くのか、ドライバーとどのようなやり取りが生じるのか、確認していきます」

重要性が高まるソフトウェアの実地テスト

「安全性という視点だけでも、答えを求めるべき疑問は沢山あります。雨が降っていて、路面が凍結していた時は? 極寒の中で電子システムはどう動くのか? 外部センサーは正常か? 駆動用バッテリーは氷点下でどうなるのか?」

「試験室のような閉ざされた環境で、極端な条件を再現することもできます。でも、自然はタダですからね! 自律運転システムのソフトウェアを確かめるため、技術者をアメリカへ派遣することもあります」

「これはボルボだけではありませんでしたが、衝突被害軽減ブレーキが動作してしまう特定の橋がありました。原因は、センサーが橋の構造部をトラックの後ろだと誤認していることだったんです。実世界のデータから、学び取れるんですよ」

雪上や氷上での走行テストでは、ノイズや振動の状況、エアコンの動作などを確かめられる。素材がどのように変化・劣化していくのかも確認できる。だが近年のモデルでは、最も重視される領域がソフトウエアだ。

走行時の安定性を保つスタビリティ・コントロールは、1990年代から量産車へ実装が始まった。2014年以降は、英国で売られる車両には義務付けられている。トラクション・コントロールと連動し、必要なタイヤへブレーキをかけ、スピンなどを回避できる。

このシステムの検証方法は複数あるが、ボルボが以前から実施しているのが、エルク(ヘラジカ)テストと呼ばれるもの。走行中に大きな動物が突然飛び出してきた状況を想定した、緊急回避テストだ。多くのドライバーが、実際に操作する可能性も高い。

トラクション・コントロールを磨くエルクテスト

スウェーデンでは、車両がヘラジカやトナカイ、イノシシなどと衝突する事故が、年間6万件以上も発生しているという。交差点から急に侵入してきたクルマにも、同じ回避操作は適用できる。

このエルクテストは、10x18mと10x36mのスラロームを使用することと、国際標準化機構(ISO)によって条件が決められている。障害物を避けるため、クルマを隣車線へ迅速に移動し、その後再び素早く元の車線へ戻すといった運転をすることになる。

歴史は古く、1970年代から実施されているそうだ。スウェーデンのテレビ番組が、初代メルセデス・ベンツAクラスを横転させてしまったことで、ご存じの読者も多いかもしれない。

それでは2024年最新のボルボは、というと、筆者の運転では期待ほどさっそうと障害物を回避できなかった。グネグネと蛇行したが、少なくとも避けることはできた。

ボルボで運転体験に関する部門を率いる、ジョン・ランデグレン氏へ質問してみる。「クルマは急速に変化しているので、エルクテストを継続する意味はあります。スタビリティ・コントロールは、特にこの20年間で大きく変化したといえます」

「初期のシステムは原始的なものでした。現在はブレーキとトルクだけでなく、多くのコンポーネントの情報も組み合わせて動作します。年々複雑になっているので、高いレベルでのテストを継続する必要があるんです」

寒冷条件で性能が悪化する駆動用バッテリー

バッテリーEVへのシフトという、大転換も進んでいる。AUTOCARの読者なら、車重は内燃エンジン車より重く、気温が低いと航続距離が短くなることはご存知だろう。

特に急激な温度変化は、駆動用バッテリーに良くない影響を与える。電気を帯びたリチウムイオンは、気温が低いほど動きが鈍くなる。そのため、バッテリーの性能が大きく低下してしまうのだ。

XC40を例にすると、AUTOCARの姉妹メディアの調査では、好条件の時と比べて、寒冷条件では29.9%も航続距離が短くなることが確認された。ノルウェーの自動車連盟も、同様の試験結果を発表している。

しかし多くの自動車メーカーは、寒い環境での性能変化に対する情報を公にしていない。ボルボも同様で、広報担当社は「寒冷地でのパフォーマンスに関してはコメントできません」としている。

取材を終えて、ルーレオーの空港へEX30で向かう。車両の後ろには、パワーテールゲートを開く小さなボタンが付いている。寒すぎて、ボタンは薄い氷の膜で覆われていたが、指で強く押して氷を割るとしっかり機能した。

冬季テストの結果は、こんなボタン1つにも反映されている。結果を測定できる内容がある一方で、経験的に判断される領域もある。いずれにしても、極限的な条件で、すべてが正常に動くことが求められることは事実。彼らの探求は、まだまだ続くだろう。

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みんなのコメント

1件
  • ベンジャミン
    evは寒さで燃費が落ちるっていうけど
    ガソリン車も同じで暖気にかなりのガソリンを消費する
    ボルボは寒さへの対応は抜かり無くて一気に温める
    アイドリングストップも0度を下回ると停止する
    ちょい乗りだと冬はガソリン消費が早い
    ボルボのPHVは優秀だしex30にもPHVモデルほしかった
    しかし円安でなければex30はやすかったはずだったのに
    もったいない車種だ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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